副業の物販が雑所得か事業所得かは、売上の大きさだけでは決まりません。継続して売っているか、帳簿をつけているか、どのくらいの規模や手間をかけているかなどを合わせて判断されるとされています。
この記事では「どちらに当たるか」を言い切ることはしません。判断に使われやすい材料を整理し、税務署や税理士に相談するときに持っていく資料をまとめます。
読み終えたら、今日のうちに自分の材料をそろえ始められるように書いています。

副業物販が雑所得か事業所得か、違いと判断の前提
まず前提です。
所得(もうけ)には、種類ごとの区分があります。副業の物販でよく話に出るのが「雑所得」と「事業所得」です。
雑所得は、ほかのどの区分にも当てはまらない所得の受け皿のようなものです。事業所得は、商売として営んでいる活動から生まれる所得です。
どちらに当たるかは、活動の中身を全体として見て判断されるもので、自分で名乗れば決まるものではありません。
「開業届を出したから事業所得」「会社員だから雑所得」と、ひとつの事実だけで決まるわけではないとされています。
国税庁は、判断の考え方を通達や案内で示しています。帳簿の保存の有無や収入の規模を目安にする考え方も示されています。細かい基準は、国税庁の案内で確かめるか、税務署・税理士に確かめてください。
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雑所得と事業所得で何が変わるのか
区分が違うと、税金の計算や手続きでできることが変わります。ここを知っておくと、相談のときに何を聞けばよいかがはっきりします。
一般に、違いが出やすいとされるのは次の点です。
- 赤字の扱い:事業所得の赤字は、給与など他の所得と差し引きできる場合があるとされています。雑所得の赤字は、原則として他の所得と差し引きできないとされています。
- 青色申告:帳簿をきちんとつけることを条件に、控除などの特典がある仕組みです。事業所得などが前提で、雑所得では使えないとされています。
- 帳簿や書類の保存:どちらの区分でも、記録や書類の保存が求められる場面があります。求められる中身は区分や状況で変わります。
- 経費の考え方:どちらでも経費は差し引けますが、どこまで認められるかは活動の中身しだいです。
「赤字を給与と相殺したいから事業所得にしたい」という考え方から入ると、判断を誤りやすくなります。区分は損得で選ぶものではなく、実態で決まるとされているからです。
具体的な控除の額や条件は、その年の国税庁の案内で確かめてください。
判断に使われやすい材料を整理する
判断のときに見られやすい材料を、いくつかの観点に分けて整理します。どれかひとつで決まるのではなく、合わせて見られると考えてください。
継続性:たまたまか、くり返しか
思いついたときに家の不用品を売っただけなのか。仕入れて売る流れを、毎月のようにくり返しているのか。
くり返し、計画を立てて売っているほど、商売としての性質が強いと見られやすいとされています。
帳簿:記録が残っているか
売上・仕入れ・経費を、日付ごとに記録しているかどうかです。
帳簿書類を保存しているかどうかは、判断の目安のひとつとして国税庁の考え方にも出てきます。記録がないと、そもそも説明ができません。
規模:売上や取扱量
売上の大きさ、扱っている商品の数、出店しているモールの数などです。
ただし、規模が大きいからといって事業所得になるとは限らず、小さいからといって雑所得になるとも限らないとされています。
手間と体制:どれだけ時間と仕組みをかけているか
仕入れ先を開拓しているか。商品撮影や商品ページづくりをしているか。発送や問い合わせ対応の流れを決めているか。
こうした手間や仕組みは、商売として営んでいるかを説明する材料になります。
もうけを出す意思:赤字が続いていないか
利益を出すつもりで続けているかどうかも、見られやすい点です。
赤字が長く続き、改善の動きも見えないと、商売としての説明がしにくくなることがあります。
自分の状況を整理する手順
ここからは手を動かす部分です。相談の前に、次の順番で材料をそろえます。
- 売上の記録を出すモールの管理画面から
- 仕入れと経費を集めるレシート・明細
- 活動の様子を書き出す頻度・手間・体制
- 帳簿の状態を確かめる抜けがないか
- 聞きたいことをメモする相談の準備
流れは、売上の記録を出す、仕入れと経費を集める、活動の様子を書き出す、帳簿の状態を確かめる、聞きたいことをメモする、の順です。
STEP 1:モールの管理画面から売上の記録を出す
出店しているモールごとに、月ごとの売上と注文の記録を出します。画面の場所や出し方はモールごとに違います。
- 楽天市場:売上や注文のデータの出し方は、RMS の画面で確かめてください。
- Amazon:売上や手数料のレポートの出し方は、セラーセントラルのヘルプで確かめてください。
- Yahoo!ショッピング:注文や売上の確かめ方は、ストアクリエイターPro のマニュアルで確かめてください。
- Shopify:売上のレポートは、Shopify の管理画面・ヘルプセンターで確かめてください。
- TikTok Shop:始まって日が浅く画面が変わりやすいので、TikTok Shop のセラーセンターで最新の出し方を確かめてください。
- メルカリ:売上の履歴の見方は、メルカリのガイド・メルカリShops の管理画面で確かめてください。
確かめ方は、出した記録の合計と、口座に入金された記録を見比べることです。手数料や送料が引かれた後の金額と、引かれる前の金額が混ざっていないかを見ます。
STEP 2:仕入れと経費の証拠を集める
仕入れのレシート、ネットで買った明細、送料、梱包材、撮影の道具などの記録を集めます。
確かめ方は、売った商品ごとに仕入れの記録がたどれるかを、いくつか抜き出して見ることです。たどれない商品が多いなら、記録の残し方を見直す合図です。
STEP 3:活動の様子を書き出す
先ほどの材料に沿って、紙かメモアプリに書き出します。
- いつから売っているか
- どのくらいの間隔で仕入れ・出品しているか
- 仕入れ先はどこか(不用品か、仕入れた商品か)
- 撮影・ページづくり・発送を誰がどうしているか
- 利益を出すために何を変えてきたか
文章でなくて大丈夫です。事実を短く並べるだけで、相談の時間が使いやすくなります。
STEP 4:帳簿の状態を確かめる
売上・仕入れ・経費が、日付ごとに記録されているかを見ます。会計ソフトでも表計算でも、手書きの帳面でもかまいません。
確かめ方は、ある月を選び、STEP 1 の売上とSTEP 2 の証拠が、帳簿の記録と合っているかを照らし合わせることです。
STEP 5:聞きたいことをメモする
「自分はどちらに当たりそうか」に加えて、「事業所得として説明するなら、何が足りないか」「今の記録のつけ方で足りるか」など、次の行動につながる質問を書いておきます。
税務署・税理士に相談するときに持っていく資料
相談の場では、口で説明するより資料を見せるほうが話が早く進みます。次のものをまとめて持っていきます。
- 売上の記録:モールごとの月別の売上と、入金の記録
- 仕入れの記録:レシートや購入明細
- 経費の記録:送料・梱包材・道具などの領収書や明細
- 帳簿:つけている場合はそのもの。つけていない場合は、その旨を正直に伝える
- 活動のメモ:STEP 3 で書き出した内容
- 給与の源泉徴収票:会社員の場合、勤め先から受け取ったもの
- 前の年の申告書の控え:申告したことがある場合
- 開業届の控え:出している場合
資料は「きれいにそろっているか」より「抜けや迷いを正直に見せられるか」が大切です。
わからない部分を隠すと、正しい助言が受けにくくなります。迷っている取引には付せんを貼るなどして、その場で聞けるようにしておきます。
相談の窓口や予約の方法は、所轄の税務署の案内で確かめてください。税理士に頼む場合は、相談の範囲と費用を最初に確かめておくと安心です。
よくある失敗
判断を誤りやすい、よくある失敗をまとめます。
- 開業届だけで決めてしまう:届を出しても、実態が伴わなければ事業所得と見られない場合があるとされています。
- 帳簿を後からまとめて作る:記憶に頼ると抜けが出ます。日々の記録があるほうが説明しやすくなります。
- モールの売上だけを見る:手数料や送料を引く前の金額と後の金額を混ぜると、計算がずれます。
- 私用の買い物を経費に混ぜる:家と兼用のものは、どこまで経費にできるかを税務署・税理士に確かめてください。
- 不用品の販売と仕入れ販売を分けていない:扱いが変わる場合があるので、記録を分けておくと相談しやすくなります。
- 勤め先のルールを見落とす:副業ができるかは、勤め先の就業規則を確かめてください。
どれも、記録を早くからつけておくことで避けやすくなります。
よくある質問
メルカリで家の不用品を売っただけでも申告が要りますか?
生活に使っていた物を売った場合は、扱いが仕入れ販売と変わることがあるとされています。売った物の種類によっても違うので、税務署・税理士に確かめてください。
途中から事業所得として扱えるようになりますか?
活動の中身が変われば、判断が変わる可能性はあります。いつから、何が変わったのかを記録しておき、税務署・税理士に確かめてください。
副業の申告をすると勤め先に知られますか?
住民税の手続きの仕方によって、勤め先に伝わる場合があるとされています。手続きの選び方はお住まいの市区町村の案内で確かめ、副業そのものの可否は勤め先の就業規則を確かめてください。
まとめ
副業物販が雑所得か事業所得かは、ひとつの事実では決まりません。継続性・帳簿・規模・手間と体制・もうけを出す意思などを合わせて判断されるとされています。
区分によって、赤字の扱いや青色申告が使えるかが変わります。ただし区分は損得で選ぶものではなく、実態で決まるとされています。
本日のポイント
- どちらに当たるかは、活動の中身を全体で見て判断される
- 帳簿や記録は、どちらの区分でも説明の土台になる
- 最終的な判断は、税務署・税理士に確かめる
今日からやること
- 出店しているモールの管理画面で、月別の売上の出し方を確かめる
- 仕入れと経費のレシート・明細を、ひとつの場所に集める
- 活動の様子を短く書き出し、聞きたいことをメモする
- 勤め先の就業規則で、副業のルールを確かめる
材料がそろっていれば、相談の時間は「どうすればよいか」を聞く時間になります。まずは記録を出すところから始めてみてください。


