利益率30%超えを目指す副業ECでは、粗利計算から固定費・変動費の整理、Excelで作れるコスト管理テンプレート、キャッシュフロー管理までを、育児や家事の合間でも取り組みやすいやさしいステップでお伝えします。
なぜEC事業で利益管理が重要なのか
利益率を見える化するメリット
EC事業では、売上だけを追いかけても本当の“儲け”は見えてきません。売上金額から原価や手数料、広告費などを差し引いた後に残る利益率を把握することで、下記のようなメリットがあります。
- 無駄なコストの発見
粗利率が低い商品や販促施策を割り出し、改善・撤退の判断がしやすくなる。 - 適切な価格設定
必要な利益率から逆算して仕入れ値や販売価格を調整できる。 - 資金繰りの安定化
キャッシュの流出入を正確に把握し、次月以降の運転資金を計画的に確保できる。
利益率を「見える化」するだけで、売上アップに固執せず、利益を最大化するEC運営へとシフトできます。
会計初心者が押さえるべき基本指標
利益管理の入口として、まずは次の3つの指標を理解しましょう。
- 売上高……期間内に得た総売上金額
- 原価……仕入れ値や製造加工費など、商品1つあたりにかかった直接コスト
- 粗利率=(売上高-原価)÷売上高×100
この3つを毎月計算・確認するだけで、EC事業の“健康状態”がひと目でわかります。
最初は電卓や手書きでOK。慣れてきたらExcelに計算式を組み込んで、クリックひとつで月次レポートが作れるようにしておくと、次のステップ固定費・変動費の分類やキャッシュフロー管理への移行もスムーズです。
会計初心者向けの粗利計算方法
まずは「売上-原価」を覚えればOK!
数字が苦手でも大丈夫。難しく考えず、一緒にゆっくり進めましょうね。
粗利とは?かんたん説明と計算式
粗利は、売上から直接かかったコストを引いた“残りのお金”です。次の式で求められます。
粗利 = 売上高 - 原価
粗利率 = (粗利 ÷ 売上高)× 100
- 売上高:お客さまにいただいたお金の合計
- 原価:商品を仕入れるのにかかったお金(仕入れ値+梱包資材など)
例:
- 月の売上が20万円
- 原価が14万円
→ 粗利は6万円、粗利率は30%
これだけ覚えれば、まずは「どれだけ稼げたか」が分かります。
実践ステップ:かんたん4ステップ
- 売上を集める
- ショップ画面や管理ツールから「今月の総売上」をメモ。
- ショップ画面や管理ツールから「今月の総売上」をメモ。
- 原価を合計する
- 仕入れた商品の請求書を見て原価をまとめる。
- 梱包資材や配送費も忘れずに。
- 仕入れた商品の請求書を見て原価をまとめる。
- Excelに入力
- A列に売上、B列に原価を入力。
- C列に =A2–B2 、D列に =C2/A2*100 と入れれば自動計算!
- A列に売上、B列に原価を入力。
- 結果をチェック
- 粗利率が30%以上かどうか確認。
- 足りないときは、仕入れ先の見直しや価格調整を考えてみましょう。
- 粗利率が30%以上かどうか確認。
この流れを毎月やると、慣れてきてサクサクできますよ。
固定費と変動費を正しく分類する
利益管理をさらに深めるには、コストを「固定費」「変動費」に分けると見通しが良くなります。
固定費に含まれる主な項目
- プラットフォームの月額利用料(出店料など)
- 会計ソフトや配送ラベル発行サービスのサブスク料
- 倉庫保管料や自宅兼用の光熱費按分分
→ 売上がゼロでも毎月かかるコストです。まずは金額を把握しましょう。
変動費の把握と削減ポイント
- 仕入れ原価:まとめ買い割引を活用したり、発注量を調整して無駄を減らす。
- 梱包資材費:箱や緩衝材はまとめて購入すると安くなる場合あり。
- 配送費:ゆうパケットやクリックポストなど、最適なプランに切り替えてみる。
変動費は売上に応じて増減するコスト。月末にしっかり記録すれば、ムダを発見しやすくなりますよ。
効率的に作るコスト管理テンプレート
「コスト管理って難しそう…」と思うかもしれませんが、Excelでシンプルなテンプレートを作れば、毎月の集計が驚くほどラクになります。ここでは初心者さん向けに、たった3つの要素でOKなテンプレート構成をご紹介しますね。
Excelで簡単に作るテンプレート構成
- シート1:コスト項目一覧
- A列に「項目名」(仕入原価、梱包資材、配送費、プラットフォーム手数料、サブスク料など)
- B列に「固定/変動」の区分を入力
- A列に「項目名」(仕入原価、梱包資材、配送費、プラットフォーム手数料、サブスク料など)
- シート2:月次実績入力
- A列に日付、B列に項目名、C列に金額を入力
- ドロップダウンで項目名を選べるようにすると入力ミスを防げます
- A列に日付、B列に項目名、C列に金額を入力
- シート3:集計ダッシュボード
- ピボットテーブルやSUMIF関数で、固定費合計・変動費合計を自動計算
- 粗利率やキャッシュフロー指標と並べて表示すると、一目で経営状況がわかります
- ピボットテーブルやSUMIF関数で、固定費合計・変動費合計を自動計算
テンプレート活用による月次予実管理
- 入力はこまめに!
毎週まとめて記入すれば、月末の慌ただしさがグッと軽減。 - 実績と予算を比較
「今月は梱包資材に〇〇円使ったから、来月は〇〇円以内に抑えよう」など、予算値を隣に表示しておくと目標管理がしやすいです。 - 色分けでメリハリを
固定費と変動費でセルの色を変えれば、コスト構造の理解が深まります。
このテンプレートをベースに、自分の扱う商品やコスト項目を足し引きしてカスタマイズすれば、あなただけの使いやすい管理ツールが完成しますよ!
キャッシュフロー管理で資金繰りを安定化
ECビジネスは「利益が出ている=お金が回っている」わけではありません。そこで大事なのが、キャッシュフロー(現金の流れ)をしっかり把握することです。
キャッシュフローと利益の違い
- 利益:売上からコストを差し引いた「会計上のもうけ」。
- キャッシュフロー:実際に手元に入ってくるお金と出ていくお金の流れ。
たとえば、売上が立っていても「後払い」や「掛け取引」が多いと現金が入ってこず、銀行預金残高は増えません。利益だけに頼ると、知らぬ間に資金ショートしてしまうリスクがあります。
月次キャッシュフロー表の作成ポイント
- 期首残高を明確にする
- 前月末の口座残高や現金手持ちを「期首残高」として記入。
- 前月末の口座残高や現金手持ちを「期首残高」として記入。
- 現金収入欄を作る
- 当月に実際に入金された金額だけを集計。売上高ではなく「入金日ベース」で記録しましょう。
- 当月に実際に入金された金額だけを集計。売上高ではなく「入金日ベース」で記録しましょう。
- 現金支出欄を作る
- 仕入代金の支払い、固定費の引き落とし、広告費など、口座から実際に出ていった支出を日付順に入力。
- 仕入代金の支払い、固定費の引き落とし、広告費など、口座から実際に出ていった支出を日付順に入力。
- 期末残高を計算
- 期首残高+収入合計-支出合計=期末残高
- 期首残高+収入合計-支出合計=期末残高
- グラフ化 or 色分け
- 残高推移を折れ線グラフにしたり、マイナスになりそうな月は赤くしておくと、早めの対策が取りやすいです。
- 残高推移を折れ線グラフにしたり、マイナスになりそうな月は赤くしておくと、早めの対策が取りやすいです。
毎月この表をチェックすれば、「今月あといくら使えるか」「来月の支払いに備えていくら残しておくか」が一目瞭然になります。資金繰りが安定すると、安心して販促や仕入れの決断ができるようになりますよ。
利益率30%超えを安定させる実践ステップ
EC事業で目標とする粗利率30%を一度達成しても、毎月同じ水準を維持するには「継続的なPDCA」が欠かせません。ここでは、初心者の方でも取り組みやすい2つのステップをご紹介します。
月次レビューで改善点を洗い出す
- 数値を振り返る時間を確保
- 毎月末、30分だけ手帳に「利益率チェックタイム」を設定。
- 毎月末、30分だけ手帳に「利益率チェックタイム」を設定。
- KPIを3つに絞る
- 売上高、原価、粗利率。これだけ押さえればOK!
- 売上高、原価、粗利率。これだけ押さえればOK!
- 前月比を比較
- 先月と比べて粗利率が下がった原因を考察。
- 原価増?梱包費増?広告費が嵩んだ?
- 原価増?梱包費増?広告費が嵩んだ?
- 先月と比べて粗利率が下がった原因を考察。
- 改善策を1つずつ実行
- 小さな改善をコツコツと。たとえば、梱包資材をまとめ買いして単価を少し下げるなど。
- 小さな改善をコツコツと。たとえば、梱包資材をまとめ買いして単価を少し下げるなど。
このプロセスを習慣化することで、「数値が気づきの材料」になり、具体的なアクションに結びつきやすくなります。
年間目標設定とアクションプラン
- 年間粗利率目標を明文化
- 例:「2025年は粗利率35%を目指す」
- 例:「2025年は粗利率35%を目指す」
- 四半期ごとのマイルストーン設定
- Q1:粗利率32%、Q2:33%…と段階的に設定。
- Q1:粗利率32%、Q2:33%…と段階的に設定。
- 各マイルストーンごとのタスク割り振り
- 仕入先の再交渉、配送方法の見直し、新商品価格の再設定などを季節ごとにスケジュール化。
- 仕入先の再交渉、配送方法の見直し、新商品価格の再設定などを季節ごとにスケジュール化。
- 定期的なレビュー会議(自分会議)
- 月次レビューとは別に、四半期ごとに1時間程度を確保して「振り返りと計画見直し」を行う。
- 月次レビューとは別に、四半期ごとに1時間程度を確保して「振り返りと計画見直し」を行う。
年間を通じた計画と定期的な見直しで、利益率30%超えを「一時的な達成」ではなく「継続的な成果」に変えていきましょう。
さいごに:数字が苦手でも、大丈夫。
ここまで読んで「ちょっと難しそう…」と思った方も大丈夫です。最初の一歩は「ざっくりでも数字を見てみること」。それだけでも、見える世界が変わります。
ちなみに筆者も、以前は粗利率が30%を切って「25%」まで落ちたことがありました。原因は「まとめ買いキャンペーンで安く売りすぎたこと」と「広告費のかけすぎ」。
でも、翌月には仕入れロットを調整し、送料を見直すだけで33%まで回復できました。数字は味方です。失敗も改善のきっかけになります。